「俺第一走だったわけ。第一走。
スタート地点でプレッシャー半端なくて、手足ガクガク、もうガクガク。」
「一走、すごいやん」
「なんでかわからん。」
「でも初めて県大のタータンの上に立って、
これが県大の舞台か…って胸が高ぶって、胸がいっぱいで、
スタート前から泣きそうになってしもて」
「うん、」
「スタートの音を聞いた時は頭が真っ白になってな、真っ白のまま200m走った、走った。」
「うん、」
「200m過ぎてペース配分考え出したけど、もうダメ。
ここらへんでどんどん抜かれてあー終わった!終わった!って
今まで何練習してきたんだろうって情けないわ苦しいわ、」
「うん、」
「残り100m切って、身体がぶっ壊れてもいいって思いながら走った。
二走にバトン渡してぶっ倒れた。」
「ペース配分ダメだったけど、自己ベストだったわけ!」
「うん、」
「すげー泣いた。感動と悔しさと情けなさでこんなに泣いたことないってくらい泣いた。
みんなに、ごめん、足引っ張ってごめん、って言ったら、
『お前が一番頑張ったんじゃないか!』ってけんけんが泣きだして、みんなで号泣した。」
「うん、」
「今日初めて、陸上やってきて良かったって思った…」
「なんや、聞いてる?
もういいわ」
解らんわけないやろ。
みゆきも陸上やってた端くれなんやから。
「うん、」以外なんか喋ったら
こっちの涙腺が崩壊して、わーっていきそうやってんもん。
そんなんないやん、威厳的にも。
無心に打ち込める何かと、仲間を見つけられた人ってのは
本当に幸運で幸せなんだ。
そして、陸上をやってきてほんとうに良かったと思えることに
この先生きていくとたくさんぶち当たるねん。
だから
いつでも全力疾走でええねん。