由比ヶ浜まで115km、後編。
前編はコチラやで。
ヨコハマー手前で
かんっぜんに逝き倒れるかも、と思った。
由比ヶ浜は鎌倉市。
ここから神奈川区、保土ヶ谷区、戸塚区、藤沢市を越えないといけない。
むりやろ。
人は悲しいくらい
忘れゆく生き物で、
初めての100kmの、あの生涯かつてないほどの苦痛を忘れかけていた。
今、思い出した。
とはいえ、
あの時はこんなもんじゃなかったけどね。
しかもな、
予定ルートは江ノ島まででジャスト100kmのはずやってん。
google mapsはほんとうに正確で、
徒歩による多少の誤差、
コンビニに寄っていたり多少回り道をしても、そんなに大きな誤差は生じない。
でもな、
miCoachのこれまで歩いた距離で逆算すると、既に藤沢で100km行ってしまうねん。
昼間うろちょろしすぎ。
かんっぜんにヒャッハァしてた。
由比ヶ浜まで行くには
一体あと何十キロ歩けばいーのんか。
いやいや100kmでいい。
100km歩ければいい。
フジサワーがゴールや。
フジサワーでタダイマーしよう。
24時間以内に
100km歩き切ろう。
いや、
もう、
フジサワーも、
24時間以内もだめかもわからんね。
歩き始めて19時間を過ぎた頃思う。
ああ、
去年のつくばでは、今頃もうゴールしていたんだ。
倒立で歩いてゴールした。
眠くもないし
足も身体も、どこも痛くなかった。
そんなときに見えてきた
ココカラ神奈川区、の標識
そして
コクイチはこっちやで、の標識
横浜に来た。
もうここらへんのお写真は
くりっく拡大してくださいよ!
息を飲む。
これが
国道一号・・・・・!
んだこれ
横浜駅東口
金港ジャンクション
首都高神奈川1号と2号の合流地点。
ここ、その真下は東海道。
京都、
大阪までも繋がる道。
ここがコクイチの始まり?って思わせるようなスケール。
始点の日本橋なんてメじゃない。
TOKYOのどこの幹線道路の主要地点よりも
それは巨大で力強く、美しく佇み
圧倒されて声も出ない
あああ、
来てよかった。
ほんとうにこの夢のために
歩いて来てよかった。
歩道橋を掛け上がる。
足?
痛くねーお。
逝き倒れるかと思うほどの眠気も吹っ飛んだ。
気持ちと身体から込み上げてくるものが抑えきれなくて、
走った。
走った。
空の色は
夜が明けようとしているそれだった。
荒ぶる気持ちを歩みにぶつけながら
超ハイペース、1km10分切って歩いているつもりでいたら
マイコーチのアナウンスが「1kmあたり、14分です★」と伝えてきた。
あん?
その後、
気付けばいつのまにか朝になってた。
朝焼けは曇っていたから見られなかった、というより
横浜の高層ビル群に隠れて見えなかったのかもしれない。
それに気付いたのは、ヨコハマーを過ぎ
保土ヶ谷区にて
ウォーキングをしているおじいさんを見掛けた時。
ああ、
もう朝ねんや…
70歳も過ぎたお爺さんのウォーキング。
100km戦士の歩きとはほど遠い。
でも健康の為に、早朝から歩いていらっしゃる。
って、
そんなお爺さんに
華麗に抜かれて、
頑張って着いて行こうとしたけれども
まるで無理だった。
ぐんぐん引き離されて
気が付いたら見えなくなってたw
わたしもう
己を100km戦士だとか名乗るの、やめよう。
そんな恐れ多いこともう言えんわ。
お爺さんについていこうとしたせいで一気に疲れた。
足がこの上ない痛みを思い出した。
あかん
これあかん痛みや。
コンビニで休憩して
漬けもので塩分補給して
オレンジジュースで糖分補給して
ストレッチをして
またよちよち歩きだす。
ああ、
塩が沁みるわ…
保土ヶ谷区を越え、
戸塚区をひた歩き、
ちょ!
ゴールまで12kmって書いてある。
あと12km歩けばタダイマーできる。
普段なんでもない時だったら
12kmなら2時間で歩ける。
今だったらどんくらい掛かるんやろ。
初めて100kmした時
「1kmって何km?」って名言が生まれた。
まさに今、それ。
国道に振られた「1」という数字に気持ちが沸き立ちながらも
速度が上がることはなかった。
そんなよちよちしていた頃、ナンパされた。
「乗せてあげるよ?」
まあ、後ろから見たら、ツインテールでセーラー服の女子や。
16さいの女の子が歩いているように見えて然りかもしれん。
でも彼は、正面のわたしを見ても
あっごめんなさい、と言って走り過ぎはしなかった。
「どこまで行くの?」
「フジサワーまで歩くの」
「藤沢まで?何言ってんの?すっげー遠いよ!
乗りなよ!」
「あかんねん。
いまな、100km歩くっていう苦行をしてんねん。
車やら電車には乗られへんねん」
「なんでそんなことしてんの?」
「歩きたいから歩いてんの!
フジサワーまであと10kmやねん!」
「じゃあ10km乗ってきなよ?」
この
わ
か
ら
ずやwwwwwwwwww
おばかさんなの?
ねえ、おばかさんなの???
「せ!や!か!ら!
100km歩き切るねんよ!
もう、90km歩いてきたねんよ!
あと10kmでゴールなんよ!」
「今車乗ったらあかんやろ???
わたしここでリタイアでけへんやろ!!!(涙ながら)」
ぽかーんとした顔で
「100km歩いたらどうするの?予定は?」
・・・・・・、
「寝るの!
ホテルに行って死んだように寝るの!!!!!!」
「じゃあそのホテル行くよ」
ああ
がんばったわたしがばかだった。
さようなら。
横付けで並走されていたけど
見えない聞こえないふりをキメたら、諦めて走り去った。
歩道無き道を歩く。
迂回路はあるのだろうけど廻っていられない。
突っ走る!
突っ走る!(といってもよちよち走るレベル)
ジンちゃんがえらく早く起きて、何度となく激励のもしもしをくれていた。
初めは
良く頑張ったよ、もう電車しなよ、みたく言葉を掛けてくれていたけれども
「歩けよ!
もうここまで来たら、足が折れても100km歩き切れよ!」
うん、
足折れても歩き切るよ、24時間以内に。
あと5km!
あと1時間2分で24時間。
この5km、普段の1時間のペースで行けるのんか。
行くしかない。
行くしかないねん。
この辺から国道がバイパスになっていて
下道と本道を行ったり来たりしなければならず
やたらとこんな階段があったり、歩道橋があったりでえらくタイムロスを起こす。
ああんまどろっこしい!
歩いていたら間に合わない。
階段を駆け上がり、また掛け降りる繰り返し。
ちょー足痛てえ。
どこがって、ぜんぶ痛い。
わたし、100km歩いたらタクシー乗んねん。
100km歩き切ったら
そっこータクシー乗んねん!!!!!!
OKYさんからメールが入った。
「お酒かあたたかい味噌汁持って応援に行きたいけど、
ごめんなさい2人のどちらかにしか行けないから行きません。
でも超応援してます。
頑張れ!!!」
馬鹿、
こんなふうに見守ってくれているだけで、嬉しーよ!!
「気合いだーーーー!行けーーーーーー!」
きよしから激励が来た。
おおおおおおおおーっ!
震え立ったわ。
一足先にゴールしたむん子と、その応援に行っていたあららちんからもしもしがくる。
「むん子おめでとう!
でもごめん!今話していられない。
ゴールしたら電話する!」
We areなイツメンは
すぐ、傍に居てくれていた。
あと480m!!!
残り時間も5分5秒。
いける
制服のポケットにすまぽん仕舞って本気走り!
本気と書いてマジと読んで?
元スプリンターの走りを見よ!!!
行ける。
行けるで。
行ける!!!
100km
きたあああああああああああああ
きたきた
きたあああああああああああああ
タクシー!
タクシー!
taxiiiiiiiii!!!
タクシードコーーーーーー!!!!
タクシーは
見当たらない。
ちょ
もー
座って
いいかな…?
ジンちゃん、きよし、むん子、あららちん、おけちゃんにゴールの報告を。
むん子とあららちんには
「タクシー!タクシードコー!」としか叫んでいなかったそうだ。
そして
たくさん、たくさん見ていてくださった方々にも
メールとブログとついったとFacebookでご報告を。
もうこの頃すまぽんのバッテリー残量が数パーセントだった。
「ごめん!バッテリーがもうなくなります!
無事100km歩き切りました。ありがとうございました!!!」
これがわたしの最後の言葉となった。
【えっみゆきちゃん天に召されたの?まだ、続く、の…?】